【ライヴレポート未満】あがた森魚 引退緊急記者会見 LIVE PERFORMANCEを見てきた。

フォークシンガー・あがた森魚が、2020年11月12日(木)にSUPER DOMMUNEにて〈あがた森魚 引退緊急記者会見LIVE PERFORMANCE〉と題して生配信&生ライヴをおこなった。

僕は、記者として最前列でその様子を見届けた。

事前に色々な質問を用意していた。「なぜ引退するのか」、「なぜこのタイミングなのか、2020年という何か理由はあったのか」など。今考えれば、そんな質問はどうでも良いことであった。

イベントの予定では、最初にライヴ、その後に記者会見があり、最後再びライヴで締めるというもの。実際その通りに進行はされていった。

順調に最初のライヴが終わる。しかしその時点で、「これ本当に引退するのか?」という心底なるエネルギーを感じた。そして、その予想はある意味的中する。

記者会見に入り、他の記者が引退のことについて触れていく。しかし、どうもその回答からは、制作途中の新アルバム『浦島2020』の話や、ラスト(と銘打った)ライヴへの意気込みの話など、前向きな発言しか出てこない。

引退とは何なのか。

そこでようやく、この〈あがた森魚 引退緊急記者会見 LIVE PERFORMANCE〉の「PERFORMANCE」の部分が見えてきたわけである。いや、正確にはあがた森魚自身は「PERFORMANCE」(宇川直宏的に言えば)とは思っていないだろう。

彼は真に音楽に面と向き合っていて、それだけなのである。

そこに引退するも引退しないもなく(確かに2020年はあがた森魚史の中で区切りにはなるだろうが)、一歩引いた時の「見方」の問題でしかないのだと、ようやく気がつくことができた。

その時点で、僕の用意していた些末な質問は、言葉としての意義をスッと失うように、訊く必要がなくなっていた。

記者会見から宇川との対話の流れで、再びライヴへと戻っていく。ほとんど無名のアーティストを横に呼び寄せ(あがた自身がオファーしたのだという)、会場全体を巻き込んでの大合唱。そこに音楽はあったが、言葉はあるようでなくなっていた。

その時点で実は僕に質問用のマイクが回ってきていた。DOMMUNEの金色のマイクはとても重かった。正直、もう僕に回して欲しくないと思ってしまった。記者失格である。

しかし、衝動とは引き継げるものだと今日信じることができた。

もし最悪、記者として当てられたら、その感謝を告白し、この衝動を持続する方法を知りたかったのだが、結局その時間は残っていなかった。むしろ、全員の終電が近づくほど時間はおしていた。

この時間がもっと続けばいいのにと思った。

それこそが、引退する/引退しないというレトリックへの回答だったのではないだろうか。

ヨコザワカイト