【INTERVIEW】町あかりが新アルバム『それゆけ!電撃流行歌』制作の裏側を語る。「レトロ」の先に再発見した地続きのリアルとは?

シンガーソングライター・町あかりが2020年10月21日(水)に新アルバム『それゆけ!電撃流行歌』をリリースした。

本作は、「青い山脈」や「丘を越えて」など戦前・戦後の流行歌を大胆なアレンジでカバーした蘇らせたカバーアルバム。昭和歌謡をこよなく愛する彼女が細部までこだわり抜いて作った意欲作だ。

本記事では、収録曲「丘を越えて」のMV撮影前にアルバム制作についてインタビュー。「昭和レトロ」と訊くと奇妙なノスタルジーを感じてしまうものだが、その先に彼女が感じて表現した「地続きの物語/リアル」とは?

文:ヨコザワカイト


「戦前・戦後の流行歌を集めてみました」

―まずは、新アルバム『それゆけ!電撃流行歌』制作の経緯から教えてください!

町あかり(以下、町):このアルバムでは、戦前・戦後の流行歌を集めてみました。去年の秋に横浜でミニライヴをやったときに、「横浜にちなんだ曲をやりたいな」と思って。私がこれまで好きだったのは、70年代/80年代の歌謡曲だったんですけれど、それからさらに遡って本当に古い曲をやることになったのがスタートです。

―遡って聴いてみてどんな印象を受けましたか?

町:メロディや曲の構成の自由度の高さが新鮮で、「こんな歌があったんだ!」という発見がたくさんありました。その発見もあって、去年の年末に純国産ダンスミュージックパーティー・和ラダイスガラージに出た時に、クラブで流行歌をかけたら面白いんじゃないかと(笑)。「丘を超えて」をクラブらしくアレンジして歌って、前奏に紙切りで「平和」っていう文字を作ってみました(笑)。そういうのも含めて、多くの人に面白いねって言ってもらえて今回のアルバムを作ることになりました。

―皆さん「そんなに遡るんだ!」ってびっくりされたと思います。しかも、サウンドは新しいですよね。僕はそのギャップと意外なマッチングに再発見を感じました。

町:クラブでもかけられるようなアレンジですよね。アナログ盤も作ったのでDJの方、是非かけてください!

―選曲はどのようにされたのでしょうか。

町:コロムビアの方に、戦前・戦後の曲であまり戦争色が強くない流行歌を100曲くらいリストアップしてもらって。そこからバリエーション豊かに素敵な曲を選んでいきました。

―平和に、というのは基準としてあったのですね。

町:そうですね。そのことは考えながら、ポップに選曲しました(笑)。

「昔を知ると今のことが分かるような気がして」

―元々、町さんは70/80年代の音楽がお好きですよね。

町:生まれる前の音楽に興味関心があって。昔の映画を見たりとかWikipediaを読んだりとか(笑)。でも、この時代の音楽には今回初めてしっかりと触れることができました。

―生まれる前の出来事のどういうところに特に興味があったのでしょうか?

町:昔を知ると今のことが分かるような気がしていて。昔の出来事や生活を知ると、今の自分の生活が見えてくるような。例えば、今の生活の豊かさだったり当たり前を見直す機会になるんです。もちろん、昔の曲を掘っていく楽しさもありますよね!

―まさにDigですね!

町:今の音楽の流行だけを見るんじゃなくて、かつてはこういう曲が流行ったからこそ今があるという流れが面白いと思うんです。その逆もあって、その時代に当たり前だとされていた流れがあったからこそ、そうではないものが急に表れたり。例えば、70年代の女性アイドルの中に急にパワフルなピンクレディーが出てきたからこそ面白いんですよね。そんな物語を意識していると音楽制作にもプラスになってくるんですよ。もちろん模倣するとかではなくて、そういう現象に憧れます。

―つまり、「レトロ」を「レトロ」として憧れているのではなく、陸続きな物語性を楽しんでいると。

町:そうです! 「レトロ」っていう雰囲気もいいんですけど、結局昔も今も実は続いていて。遠い昔だと敬遠しちゃいがちだけど、今と全く異なる生活ではないんですよ。だからもし、自分がもし1975年にいたらっていうことを“リアルに”考えて、楽しんだりできるんです。

―「懐かしさ」とはまた違う感情なのでしょうか?

町:「懐かしい」ではないんですよね。ノスタルジーって思い込みによるものが大きいと思っていて。もっと純粋に作品として楽しみたいんです。

―だんだんわかってきました! それを知るとアルバムの楽しみに深みが出てきますね。

町:例えば、モノクロの写真とか映像をAI技術でカラーに復元できたりするじゃないですか。その時の生活が見えると親近感が湧いてきて。近所のお姉さんかなっていうくらい(笑)。だから、「古いから」を理由に自分の世界の世界とは別なんだって考えなくていいんですよ。その先入観を解いていきたいというのは、このアルバム含め常に思っています。

別冊を作ることになった経緯とは?

―『それゆけ!電撃流行歌』というタイトルはどのように決まったのでしょうか?

町:このタイトルにはすぐに決まったんです。打ち込みアレンジっていうこともあったし、電気/電撃が走るっていう表現がその時代からあったって訊いて。カクテルのデンキブランとかもそうですよね。

―山田参助さんが制作されたジャケットも素敵です。

町:これ、めっちゃ可愛いですよね! 山田さんの作品を知って以来、個人的に大ファンなんです。ライヴにも行って(「泊」というユニットでボーカルも務めている)、本人にもファンだということを伝えていたくらいで。今回は「花言葉の唄(duet with 山田参助)」でもご一緒できて本当に嬉しかったです!

―チャイナ服と月といえば鶴田謙二『チャイナさんの憂鬱』も思い出しますが、アルバム収録の楽曲「上海帰りのリル」がイメージの元なのでしょうか。ちなみに、『別冊!電撃流行歌』(アルバム曲の別バージョン4曲を収録)も作られたということで。

町:元々、別冊を作る予定はなかったのですが、試しでアレンジ違いをいくつか作って、そこから選ぼうとしていて。でも出来上がったものが全部良かったので、別冊としてリリースすることになりました(笑)。

―聴き比べるのも楽しかったです。「サーカスの唄(別冊ver.)」のアレンジも最高でした。

町:あれはやばいですよね! 他のアーティストの方にも結構反応をいただけるのが、あの曲なんです。

―ちなみにカバーアルバムの制作は初ということで、その点で大変さはありましたか?

町:実はいつもと比べて、めっちゃめちゃ大変でした(笑)! 特にボーカルにはオリジナルを歌う時よりも、こだわったかもしれません。「上海帰りのリル」なんて、歌えるギリギリまでキーを下げていて。歌唱法とか細々としたところまで一生懸命作り込みました。是非、注目して聴いてみてほしいです!

「今後の作品作りに活かせる所だと思います」

―アルバムのリリース含め2020年で町さんはさらに勢いを増しましたよね。

町:2020年は、かなり充実した年になりました。ぼんぼん花ーーー火(町あかりがプロデュースする2ピースバンド)のデビューアルバム『ぼんぼん花ーーー火』が出たのも今年の始めですよね。イベントはできませんでしたが、昭和歌謡の本を書かせていただいてアルバムの制作もできて、とっても勉強になりましたし、町あかりの幅が広がったような年になりました。ライヴで新アルバムの曲を早く披露したいです。クラブでも流したいですし、盆踊りとかお祭りでもやりたいですね(笑)。

―ファンの方との交流としては、ネットサイン会も開催されたようで。ちなみに最近は配信も増えましたけれど、町さんは前から配信ライヴをされていましたよね。

町:そうなんですよ。ツイキャス(TwitCasting)もやっていて、ファンの皆さんが結構みてくれていて嬉しいんです!

LINK:https://twitcasting.tv/mcakr/

―YouTubeの動画も精力的に更新されていて。

町:成瀬英樹さんと筒美京平先生の曲をカバーするという企画をやっています。実は、筒美先生が亡くなられたのが10月なんですけれど、そんなことは知らずに夏から動画を制作してアップをしていたんです。元々成瀬さんとやろうとしていたツーマンが開催できなくなってしまって、その代わりに動画制作を一緒にやろうとなって。楽しく収録しているんですが、音はおふざけなしでかなり作り込んだものになっています!

―かなりカバーに力を入れた年になりましたね。

町:元の曲を聴きながら、どんな歌い方にしようかなと考えるとカバーをしてかなり勉強になる部分は大きいですね。今後の作品作りに活かせる所だと思います!


<インタビューを終えて>

インタビュー後、アルバム収録曲「丘を越えて」のMV撮影の現場に密着した。この日は、町が楽しそうにゲームをプレイしているシーンを撮影。

本MVは、ゲームの世界に飛び込んだような可愛らしい映像に、この日撮影した町あかりのプレイ映像が織り込まれた作品となっているとのこと。本楽曲のアレンジを聴いて、監督がゲーム音楽のようだと着想を得たところからイメージを膨らませて制作したのだという。

本MVは11月中旬に解禁予定とのこと。発表を楽しみに待とう。