『極悪レミー』追悼上映会を3倍楽しむための見どころ紹介:ジャックコークとレミーの言う事は後で効く

暴走ロックンロールの帝王、モーターヘッドのフロントマンでありVo./B.のレミー・キルミスターが、2015年12月28日に伝説となってから今年で5年。

レミーが亡くなってからの毎年、レミーの命日(12/28)に“モーターヘッド”、“レミー”関連の映画を上映してきたシネマート新宿では、今年も年末の恒例行事となりつつある“レミー祭り”の開催が決定。今年の上映作品は、2010年に劇場公開され大ヒットしたレミーのドキュメンタリー映画『極悪レミー』が久々に登場する。

本イベントの開催にあたって、『モーターヘッド伝説 完全ディスコグラフィ&ヒストリー』や『モーターヘッドのレミーが遺したもの~アティチュード、サウンド、ファッション、ライフスタイル、唯一無二の生き方~』の著者・shuhei hasegawaから本映画について熱い文章が届いたので、是非チェックして欲しい。

以下、文章:shuhei hasegawa

サムネイル写真:英ハマースミスアポロにて、’16年1月撮影

写真提供:ビーズインターナショナル


モーターヘッドのフロントマンであるレミー・キルミスターがこの世を去ってから、もうすぐ5年が経とうとしている。レミー急逝後、映画の追悼上映会が毎年開催されており、一昨年と昨年はラストツアーを収録した『モーターヘッド/クリーン・ユア・クロック』が公開されたが、今年は『極悪レミー』が上映される。

本作は、レミーを追いかけたドキュメンタリー作品。’08年から’09年ごろのツアーやLAの自宅を取材し、関係者が語るエピソードとともにその素顔に迫る内容。2010年12月に公開されると大きな話題となり、モーターヘッドが再評価されるキッカケとなった。

筆者は90年代後半からモーターヘッドファンとして活動しているが、この映画がバンドの人気を大きく変えたと記憶している。それまで国内では彼らに対する評価は極めて低く、来日公演(単独公演としては’00年が最後で、それ以降はフェスに出演)においても、観客は決して多くはなかったが、この映画が公開されると、モーターヘッドやレミーに対するリスペクトの声が上がるようになる。

さて、本作はレミーの故郷から始まり、少年時代、ジミ・ヘンドリックスのローディー時代、ギタリスト時代、ホークウインド時代、そしてモーターヘッド結成とその活動までを追いかける。

音楽面での見どころは、なんと言っても、メタリカとの共演シーン(2009年9月ナッシュビル公演)だろう。文句なしにカッコいい。世界的バンドとなったメタリカのメンバーが、レミーとの共演にエキサイトするのだから、そのスゴさが分かるだろう。レミーのことを知らない人でも楽しめるはずだ。

そのようなスポットライトを浴びる一方で、モーターヘッドのツアーではバスで寝泊まりし、オフの自宅ではゲームに没頭する姿があり、彼の光と影が映し出される。しかしながら、レミーは「ツアーをするなら、家庭は持てない、ツアーか結婚のどちらかだ」と考えており、その孤独はレミーらしさでもあるのだ。

また、本作ではそれまであまり知られることがなかった、レミーのプライベートな面も知ることができる。レコード店で買い物するレミー、息子について語るレミー、ナイフコレクションを紹介するレミー、戦車に乗るレミー。この時レミーは60代前半、還暦を過ぎたとは思えない、少年のようなエネルギーに満ち溢れている。常々彼は「自分のやりたいことをやる」と主張していたが、人生を謳歌し、ハッピーに過ごす秘訣はそこにあると再認識させられる。そのことはラストの「Don’t Worry, Be Happy」というフレーズにも表れていて、彼が度重なる困難を乗り越えることができたのは、常にポジティブだったからに違いない。最後のあのシーンには、そういうメッセージが込められているのだろう。

もうひとつ、レミーがレコード店で買い物する場面にも注目したい。彼はビートルズのボックスセットを探し、店員に尋ねるが、残念ながら売り切れていた。と思ったところ、店のオーナーが自分の分を譲ってくれると伝えられる。この時レミーは、オーナーに直接礼を言いたいと申し出る。彼の誠実さが垣間見えるシーンだ。

そのような誠実さは、ファンやスタッフに対しても同様で、映画の中でもファンとの交流シーンがある。筆者はレミーと何度か会ったことがあるが、その際も紳士的な態度で接してくれた。筆者の拙い英語を辛抱強く聞いてくれ、サインや記念撮影にも気軽に応じてくれた。CDなどのアイテムを持参して楽屋を訪ねようものなら、「それにサインしようか?」と自ら気を利かせてくれ、こちらが恐縮するほどだ。また、こちらが何か質問すると、その豊富な知識と経験を丁寧に話してくれ、一見冗談に聞こえる話も、自分が歳を取るにつれ、その意味がじわじわと理解できるようになってきた。冷酒と親(ジャックコークとレミー)の言う事は後で効くということか。本作の中でも、レミーはたくさんの名言・迷言を残しているので、ぜひチェックして欲しい。というように、本作はレミー初心者からマニアまでが楽しめる内容となっている。

こうしたレミーの誠実さについて説明すると、本タイトルの「極悪」という言葉を不思議に思うかもしれないが、これはモーターヘッドを代表するライヴアルバムの邦題『極悪ライヴ』が由来であり、その型破りな姿勢、レミーらしさという意味が込められているに違いない。

最後に、レミー追悼上映会を毎年開催してくださる関係者や会場に感謝したい。モーターヘッドのライヴがなくても、ファンのみんなで一緒の時間を過ごす。なんと素晴らしいことだろうか。こんな時だからこそ、その大切さを強く感じる。この映画をキッカケに再評価されるようになったとはいえ、欧米に比べれば、日本での人気はまだまだ低く、メディアやイベントへの露出は極めて稀である。しかし、日本にはこの追悼上映会がある。毎年シネマート新宿のロビー壁には、モーターヘッドの写真やアートワークが飾り付けられ、多くのファンが集まり、特別な雰囲気を作り出す。そこはあたかもモーターヘッドのライヴ会場のような賑わいで、胸が高鳴る。これはただの追悼上映会ではなく、レミーをリスペクトするための会場なのだ。そこにはヴァッケンやハマースミスにも負けない”レミー愛”がある。

上映会に参加できないファンは、自分の好きなやり方でレミーにリスペクトを示そう。レミーの誕生日24日から命日28日までは「レミーウィーク」。この期間にレミー関連の音楽を聴く、映像を観る、Tシャツを着る、友人とモーターヘッドについて話す、酒を飲む、アート作品を作る、SNSへ投稿するなど…レミーの死を悲しむのではなく、彼の素晴らしい人生を称えよう。

モーターヘッドは解散してしまったが、この世から完全に消えてしまったわけではない。その伝説はまだ続いている。その火を消さないためにも追悼上映会に集まろう。

(shuhei hasegawa)


■イベント情報

『極悪レミー』1日限定最大音量追悼上映

日時:2020年12月28日(月)20:30
劇場:シネマート新宿(SC1)
料金:通常料金 
販売:2020年12月3日(木)18:00より劇場窓口、オンラインにて発売開始
予約: https://www.cinemart-ticket.jp/shinjuku/schedule/index.php


shuhei hasegawa
著者プロフィール:高校中退後、バンド活動に専念するが、英米でのコンサート体験をキッカケに大検・大学・大学院へ進学し、HR/HMを文化的側面から研究する。『モーターヘッド極悪列伝』『レミー自伝』『モーターヘッド/クリーン・ユア・クロック』パンフに寄稿。メタルカルチャーについての著書eBookも好評配信中。

ツイッター:@mhb1851